凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━





不気味な竹薮へと足を踏み入れ、少し歩くと数人の男たちがいた。あれが友人か。




「えらい遅かったなぁ」


私たちに気付いたその内の一人が声をかける。


「すまんすまん。けど、予定通りやろ?」


平田はそう言って笑うと、背後に隠れるように立っていた私の背に手を回し、自分の前へと自然な手付きで押し出す。一気に私へと集中する視線。



「この子がそうなんか?」

「せや。名前は…………そういや、名前なんでしたっけ?」

「あ、朔、です…」

「そう、朔ちゃんや」


注がれる視線は何故だか不快にしか感じられない。この人たち、本当に私を助けてくれるの?




「へぇ~…この子がねぇ」

「なんやほんまに男みたいな形(ナリ)やなぁ」

「娘には見えへんわ」

「髪わざわざ切ったんか?」



目を好奇で輝かせ、物珍しげに言う男たち。


こんな人たちとこれから一緒だなんて、大丈夫なのかな…。

そんな思いが脳裏を過ぎったとき、



「ほな、後は頼んだで」

「―――っあ!」



平田は私の背に添えていた手に力を込め、私を男たちの輪の中へ突き飛ばした。予想外の行動によろける私の両肩を、一人の男が支える。


急に何?!

体勢を立て直し、視線だけでそう訴える。平田は薄く笑い、背を向けると信じられない台詞を口にした。



「犯すんも殺すんも、順番はご自由にー」



え……?