凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━





「長束。今、巡察に出ている隊は?」

「確か…三番隊と、」

「逃走した娘を捕らえるよう、今すぐ伝令を走らせろ!!手引きがいる可能性もある、こいつらの仲間と思われる野郎は斬って構わねぇ。まだそう遠くには行ってねぇはずだ!」

「承知しましたッ」

「あ!」


鋭く頷き、直様退室しようとした長束をまたもや鞠千代の声が止めた。



「あ゛?」


まだあんのか、と眉を吊り上げる土方。鞠千代は引きつった笑みを湛える。


「いやー実はですね、ここに来る途中、しのちゃんと沖田くんに会いまして…」

「……言ったのか」

「あはははははっ…」

「言いやがったんだな」


疑問ではなく、断定での尋問。鞠千代は観念したように頷いた。



「あたしが言った途端……二人とも屯所を飛び出していきました―――」