「俺の務めは果たした。殺すなら殺せ」
「務め…?なら、その務めってのをおとなしく吐きゃ望み通り殺してやるよ」
土方は口角を上げ不適な笑みを浮かべる。男は僅かに視線を逸らしたが、再びそれを土方に戻し、目を据えた。
「俺に構うだけ時間の無駄だぞ」
「あ?どういう意味だ?」
「まぁ……あの長人の生死などどうでもいいがな」
土方はこの台詞に違和感を覚える。
――長人…?あの小娘のことか?だが、この言い方……この男、やつの仲間じゃないのか?だとすれば、こいつらは一体…?
この疑問を晴らすべく土方が口を開きかけたとき、バタバタと大きな音が耳に飛び込んできた。数人分の足音がここへ近づいてくる。開けっ放しにされたままの襖へ視線をやると同時に隊士たちが顔を出した。
「なんだ、騒騒しい」
土方が言うや否や、どこか焦ったような顔つきの隊士たちは我先にと口を開く。
「副長!大変なんです!」
「門番が何者かにより気絶させられていて…!」
「不審な男が隊士内に紛れ込んでいるのを発見しました!!」
次々に舞い込んでくる報告に土方は眉間に深い皺を刻む。
――くそッ…!一体どうなってんだこりゃ…?
「さっさと歩け!」
先ほど長束が連れてきた男同様に手を縛られた男が土方の前に差し出される。するとその男より先に不審者として捕らえられた右頬を腫らした男が、驚いたように声を上げた。
「俺一人ならともかく、何でお前まで逃げ遅れてやがる?!」
「うるせぇ!そりゃこっちの台詞だ!」
「何だとおッ?!」
始まったのは醜い仲間割れ。呆れ果てると同時に込み上げてきた怒りが頂点に達しようとしたそのとき、
「あ、そういえば!」
何やら思い出したのか、鞠千代がポンと手を叩く。
