二人が部屋を出ていってから、かなりの時間が経った。
その間、私はずっと留紺(トメコン)の暗い虚空を見つめ、意識を彷徨わせていた。あれだけ次から次へと溢れてきていた涙ももう流れはしない。
私、終わるんだ。もう……本当に助からないんだ。
心の中で繰り返すはそればかり。
生きているはずのない時代で死ぬ、なんて……おかしな話だよね。
笑えてくる。そう思うのに、口許に笑みは浮かばない。間近に迫りつつあるかもしれない死の時すら、さっきまでは恐ろしいだけでしかなかったのに今は何故か他人事のように感じられた。
完璧に希望を失えば、人は恐怖を感じなくなってしまうのかな……。
けれど、運命とは時に残酷でしかなくて。飽きもせず、私の心を弄ぶ。
―――トントン
控えめに戸を叩く音が聞こえた。
誰だろう……東雲さん?
一瞬そう思ったけど、決して無作法というわけでないものの彼女なら何も言わずに先に戸を開けるはず。今更畏まり戸を叩くとは考えにくい。じゃあ、誰か。
―――トントン
悩む私を急かすようにもう一度。戸の向こう側の相手は入室の許可を得ようとする。
「……誰、ですか?」
戸に近づこうとはせず、座ったままの離れた位置から尋ねてみる。
その呼びかけに応えるように戸が静かに開き、見知らぬ青年が顔を覗かせた。相手が男であることに体が強張る。すると、青年は実に人の良さそうな笑みを浮かべ、言った。
「助けにきましたよ」
