「誰も真剣に話聞いてくれなくて、私が怪しいから当たり前だけど…でも、でもっ……私、ほんとにわからないんです!」
「やめろと言ってるだろ!聞こえないのか?!」
「死にたくない、死にたくないんです!私がもし長州の間者だったら、殺されたくないから知ってることはちゃんと全部話してます!何も知らないしわからないから話せないだけで、隠してるわけじゃない、嘘ついてるわけじゃない…お願いです!私を助けて下さい!!」
「黙らぬのなら…斬る!」
「っ」
本当に殺すつもりで言ってるんじゃないんだと思う。ただ牽制と威嚇の意を込め、東雲さんが脇差しを抜こうとした―――と、同時に私の喉元に鋭いクナイが宛がわれた。
時間が一瞬、止まる。
「黙りなよ」
そのクナイを握る相手。全く感情のない顔と声。さっきまでいた天真爛漫の少女はもういない。これが、忍という彼女本来の姿なんだ。
服を掴んでいた腕をだらりと落とす。刃物を向けられた恐怖から、とかじゃない。失望。
やっぱり、この子も、他の新撰組の人たちと同じなんだ。助けてくれるわけじゃないんだ……。
思えば、この子は助けてあげる、なんて一度も口にはしてない。それなのに淡い期待を抱いてしまっていた。馬鹿みたい。勝手に期待して、裏切られたと勝手に勘違いしている。
都合のいい考えの自分が、本当に本当に、馬鹿みたい……。
「ごめん」
小さく呟き、鞠千代はそっとクナイをしまうと私から離れ、廊下へと姿を消す。東雲さんもそれに続き無言で部屋を立ち去っていった。
たちまち襲う、自嘲の念と深い喪失感。
一人きりとなった部屋。もう、涙も流れてはこなかった。
