「きゃーしのちゃん、顔怖っ!!」
「うるさい!だいたい鞠、お前、天井裏に忍び込むだけなら未だしも、なんでのこのここいつの前に出てきたんだ?!」
わざとらしく怖がったふりをする鞠千代に冷静さを欠いた彼女は早口で捲くし立てる。
「えーだってさ、初めは出てくつもりなんて更々なかったけど、目の前であんだけめそめそしくしくされちゃ、流石のあたしも良心をを刺激されてしまったというか…」
仕方ないじゃん、最後にそう付け加え、鞠千代は拗ねたように唇を尖らせた。呆れ果て、怒りも消え失せた様子の東雲さんは土方さんみたいに眉間に皺を寄せ、額に手を当てた。
「だからって出てくるか、ふつう…」
「だって相手が相手じゃない!そりゃね、あたしも強面の男の男泣きとかなら邪魔しないし、寧ろ嘲笑って受け流すくらいだけど…」
そこまで言って、憐憫が込められた眼差しを注がれる。
「こんな弱弱しい子が相手じゃあねぇ……。ほんっと、間者らしくないっていうか…密偵になる素質0でしょ?どっからどう見ても。さっさと解放してあげればいいのに」
―――っ!!
この子なら、私の話を聞いてくれるかもしれない…!
微かな光。いつ消えてしまうか、いつ見失ってしまうかわからない。もう、この機会を逃がすわけにはいかなかった。
「お願いですっ、私を助けて!!」
「わ、何何何ッ?!」
両手を伸ばし、鞠千代へ縋り付く。
「私、本当に間者じゃないし長州の人間でもないんです!嘘じゃない…!」
「おい、やめろ!黙れ」
必死に自らの潔白を証明しようとする。東雲さんから静止がかかろうと、構うことなく続けた。
