じっとり、と。粘着質のように体に張り付いてくる東雲さんの視線を前に、ごまかしは通用しないと諦めた少女の虚しい笑い声が途切れた。
少女は小さくため息を吐くと、先ほどとは打って変わった真剣な眼差しで問いかける。
「あたしがここにいた理由、あたしの独断じゃない……かも、しれないよ?」
東雲さんの肩が僅かにぴくりと揺れた。
なんなんだろう?
場に静寂が訪れる。突然黙ってしまった二人に急に居心地が悪くなった。どうするべきか思案していると、少女が笑顔を向けた。
「そーいえば、自己紹介まだだったね!」
「はい……?」
人懐っこい笑み。予想外の展開に目が点になる。この状況でなんで自己紹介?
少女は私の反応なんてお構いなしに、やけに芝居がかった口調で話し始める。
「あるときは監察方。またあるときは賄方。そんなあたしの正体とは………しのちゃんに寄り添う健気で可憐なくのいち、鞠千代(マリチヨ)でーす!」
「馬鹿っ、自分の素性を簡単にばらしてどうする!!」
少女―――鞠千代が言い終わるや否や、東雲さんは怒声を響かせた。
なんか、芸人のやりとりを見てるみたい…。
