「ちょっとーあたしの話し聞いてる?」
「は、はぁ…」
目の前で手をひらひら振る少女。奇妙な状況に混乱しつつ、数回頷いた。
「一つ訊きたいんだ。……さっきあんたが言ってた、元のじだ―――」
「いるのは誰だ!?」
少女の声を塗り潰すような鋭い声と共に、引き戸が勢い良く音を立て開いた。
その先に立っていたのは、腰の脇差しに手を添えている東雲さん。
すると少女の顔を見た途端、面食らったようにその手を放した―――のも束の間、普段の仏頂面を取り戻し、見事なまでの棒読みで少女に向かいこう言った。
「何故ここにいる」
「あははは~……どーもー……」
少女は取り繕うように乾いた笑い声を零す。
この二人、全く正反対の存在に思えたのに、知り合いなんだ。意外だな…。
気まずい空気が流れる。私が自分一人だけ取り残されたような妙な疎外感を味わっていると、表情は少しも変えず声にだけ静かな怒りを含ませ、東雲さんが口を開いた。
「ここは立ち入り禁止だと、今朝、副長から話があったはずだが…何故ここにいるんだ?」
「あ、あっれぇ?そんなお話あったっけ…?あっでもでも!しのちゃん以外に島田さんも今朝出入りしてたよ?!」
「島田さんは副長の命を受けたからだ。あれは例外。……と、いうかなんでそんなとこまで知っている。いつから天井裏に忍び込んでいた?お前は今日は、監察方の手伝いとして外に出ていると耳にしたがな」
「あーそれはですね………ほらっ、山崎くんは優秀だからさぁ、あたしなんかいなくても枡屋の見張りは十分だよねー!ってな感じで…」
「………へぇ。で、副長の命に背き、独断でここにいるわけか」
