「では、話を戻しましょうか」
一人だけ和やかな雰囲気を纏った山南さんが全員を見回す。
「綾瀬くん、といいましたね」
「は、はいっ」
名を呼ばれ、緩んでいた背筋がぴんと伸びた。
「先ほど君は、〝気づいたらあの邸にいて、その理由は自分にもわからない〟と、言ったが…あそこで目覚める前は、どこにいたんですか?」
「……それも、わからないです」
「んなわけねーだろうよ。そんな馬鹿な話があるか。それくらい正直に答えたらどうだ?」
山南さんとは温度差のある土方さんの瞳に、またしても何も言い返せなくなってしまう。
短時間の内に大きくすり減らされた精神は、限界を迎えようとしていた。家族関係で元々脆くなってはいたけれど、昨夜から数回に亘り感じた命の危機や、自分が長州の人間であると認めない限り、終わりの見えてこないこの尋問に、徐々に気力は失われつつある。
ほんとうに、どうしたらいいんだろう……―――
いっそ思いきり泣き喚きたい衝動に駆られたそのとき、
「もしかしてこの子、記憶がないんじゃないですか?」
口許に手をあて、沖田さんがぽつりと零した。
