凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━





「そりゃなんの真似だ?」


座り直した土方さんが、沖田さんに問う。

勝手に刀を抜いているにも関わらず、室内にいる人は皆、冷静。力ずくで沖田さんを止めようとする人は一人も見受けられない。


私なんか別に殺されても構わないと、そう思っている心の表れってこと?


皆の行動が指す答えは私にとって、残酷でしかない。




「いいじゃないですか、土方さん。さっきからこの子、ずっと訳のわからないことばかり言ってるんです。本当のこと吐かないのなら……いっそ殺しちゃいましょう?」

「…もう一度聞くぞ、総司。なんの真似だ?」



交わる、鋭い瞳と愉しげな瞳。

冷たい空気が流れる。早くその刀をしまって、と。それだけを必死に心の中で願う。



「呆れた。やはり…これほどまでに呆れたのは今日が初めてだな」


体を強張らせていると、背後から盛大なため息が聞こえた。

一瞬、また自分のことかと思ったけれど、東雲さんの淡白な視線の向く先は沖田さんだ。



「なんの事?」

「惚けるな。そいつを殺したいなら……殺気くらい出したらどうだ?今のお前からは殺気が微塵も感じられない。ほんとは、殺す気など更々ないくせに」


その台詞に面食らった私は目を見張る。東雲さんの指摘を肯定するかのように、沖田は白けた表情になった。



「あーあ、土方さんは気づいてても口に出さないでくれたのに、なんで君は口に出すかな…」


心底つまらなそうに言い、彼は刀を鞘に納めた。

私の体から、一気に力が抜ける。

……信じられない。こんな笑えない冗談初めてだよ。