凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━




「ぼろが出ねぇように黙ろうって魂胆か?てめぇ、やっぱり―――」

「わ、わからないんです…っ!!」



咄嗟に私の口をついて出た言葉は、しん…と室内を静まり返らせるには十分で。

どっと後悔と自責の念が押し寄せてきた。


何言ってるの私は…?!私が何故あそこにいたか、私自身にだってわからないんだから、この答えはある意味まちがいじゃないけど…。

新撰組副長は、やはりおとなしく納得してくれるような人物じゃなかった。




「あぁ゛?わからないだぁ?………てんめぇ…嘘つくなら、せめてもっとましな嘘つきやがれ!!!」

「土方くんっ…!」



沈黙を突き破る怒声。額に血管を浮かび上がらせ立ち上がる土方さんを、山南さんが膝立ちになり制する。

…数分前、東雲さんを止めにきてくれた島田さんを思い出す。


土方さんは握り締めた拳を怒りでわなわなと震えさせているけど、口にした台詞はもはや削除不可能。他に思いつく言い訳もない。


もう、一か八かこのまま貫きとおすしかない…―――!!




「ほんとなんです!私っ」

「そんな言い分が俺たちに通じるとでも思って、」

「でもっ…嘘じゃないんです!気づいたらあの部屋に倒れてて、何もわからないまま現れた男の人に殺されそうになって……なんでこうなってるのか、自分でもよくわからないんです!信じてもらえないでしょうけど、全部本当なんです…!私、嘘なんてついてません!お願いです、信じてください!!」



自分でも驚くほど、一気にしゃべった。

必死の形相で、泣きそうになりながらも、今言えるありのままのことを。