連れてこられたのはふつうの和室。
室内には、三人の男性が私を待ち構えていた、といった感じに座していた。
漂う空気、一斉に向けられた視線は決して歓迎しているようなものじゃない。寧ろ、敵意と疑心に満ちていることが一般人の私にも、ひしひしと伝わってきた。
「っ」
その光景に息が詰まり、足が竦み動かせなくなる。少女に背を押され、ようやく室内へと足を踏み入れることができた。
「連れてきました」
「ご苦労」
少女に返答したのは三人の男の内、右に座っていた紅掛空色(ベニカケソライロ)の着物の男性。
年齢は二十台半ばか、後半だろうか。見事に均整の取れた顔。恐らくここにいる人間の中では私に対し一番強い警戒心を抱いている。その証拠に、髪色と同様の漆黒の瞳は射抜くように真っ直ぐ私へと向けられていた。
「座れ」
少女に促され、私は戸惑いつつもその場に腰を下ろした。
「じゃあ、私はこれで失礼しますよ。仕事を山崎くん一人に押し付けてきたもんでね」
「あぁ、島田さんも悪かったな」
最後まで私を気にかける素振りを見せ、島田さんはいなくなった。
「では、私もこれで―――」
「待ちなさい」
島田さんに続き退室しようとした少女を今度は三人の内、左側に座っていた木賊色(トクサイロ)の着流しに麹塵(キクジン)の上掛けを羽織った優男風の男性が止める。
この場の空気には似合わない、穏やかな声。同様に丸眼鏡をかけた色白の顔からも、その温厚そうな人柄の良さが伝わってくる。さっきの鋭い目つきの男性とは差がありすぎてびっくりする。
