時刻は丑三つ時を過ぎた頃。外には薄い霧が立ち込めている。


とある屋敷の一角。

ほとんどの者が眠りについていてもおかしくないであろう時間、一つだけ燭台に灯りのついている部屋があった。

室内には、三人の男の姿。





「失礼します」


すーっと障子を開き、男装した一人の少女が軽く頭を下げた。

僅かに吹き込んだ風に、ゆらゆら、蝋燭の火が揺れる。



「どうだった?」


三人の内の一人、手拭いで首筋を拭いていた男が声をかけた。

役者のように、全てが完璧に整った顔。綺麗だからこそ、その目つきの鋭さを強調している。



「はい、確認したところ……娘でした」

「な、ななな何ぃっ?!本当に娘だったのか?!」


淡々と述べられた報告に、先ほど声をかけた男の左隣に腕を組み座っていた男が素っ頓狂な声を上げた。

よほど驚いたのか、男らしかった顔つきが、今はなんとも間抜けな面となっている。



「…驚きすぎだろ、近藤さん。ま、確かにわからなくはねぇけどよ」

「しかしだな、トシ……一体どういうことだ?これは…」

「報告は以上です。私は引き続き、あの部屋の見張りに。失礼致します」



二人のやり取りには然程興味がないのか、少女は立ち上がり一礼すると、静かに部屋を後にした。




「おい、総司」


足音が遠ざかってゆくのを確認し、鋭い目の男は口許だけで笑みを作り、今し方のやり取りを黙って見ていた青年の名を呼ぶ。


「ん、何ですか?」


青年が男の方を向く。

端整な顔つきに爽やかな声。まるで眉目秀麗という言葉の具現化。首を動かしたとき、結われた少し色素の薄い髪が揺れた。