そしてその男が倒れ込んだことにより、男と向かい合うように立っていた、もう一つの存在を知る。



「―――っ!!」



開け放たれ、ところどころ破れた障子を背景に、闇の中で光る黄色の双眸。

僅かに差し込んだ月光を受け、長い髪は赤く輝いていて。


人の形をしている。でも明らかににんげんではない異形を目の前に、私は思わず目を見開いた。

自分を睨んでいる黄色の瞳に肌が粟立つ。



ここにいては、ダメ。殺される…!


本能的な直感。声が出せない。金縛りにでもあってるみたいに体が動かない。


誰か……誰か、助けて!!



心の中だけで叫び、目をぎゅっと瞑ったときだった。




「いた…!見つけましたっ!!」



鋭い声と共に、異形の背後の破れた障子の元に現れた青年。

闇に溶け込むような黒い衣服を身に纏い、口元を同じく黒い布で覆っている。

敵か味方かよくわからない人物の登場。



助かった、の…?


一瞬そう思ったものの、青年が右手に手にしていた物を見て淡い希望は瞬く間に潰えた。


握っていたのは、銀色の刃。刃といっても、台所にある見慣れた包丁なんかじゃない。今の時代、普通に生きてればあまり目にかからない代物。テレビの時代劇でしか見たことがない、日本刀だ。


なんであんなものを…。あれって銃刀法違反で警察に捕まるんじゃ?