「いいよ。もう昨日のあの時とは、顔が違うから。吹っ切れたみたいに違う。昨日あれからしのちゃんと話して、なんか変わったんでしょ?」
「はい、前向きに生きようって……思えたんです」
「だったらもうそれでいいじゃないか。それにさ、僕たちの仕事って……まぁやってることがやってることだから誰かから感謝なんてされたこと、ないんだ。だから……」
彼は表情を綻ばせる。
「謝らずお礼で止めといてくれたら、うれしいんだけど?」
「わかり、ました。……ありがとう」
気づかせてくれて、本当にありがとう。でも、なんで私をこんなに心配してくれるんだろう?
そう思っていると、彼は立ち上がる。
「夜風に当たりすぎて体が冷えたら大変だ。そろそろ戻ろう?土方さんにバレても厄介だし」
「うっ…」
土方さんの名前が出た途端、私は慌てて腰を上げた。せっかく見逃してくれた相手の逆鱗に触れ、再び拘束でもされたら非っ常ーに厄介だ。
「あ、沖田さん」
思いついたように、戻ろうとした彼を止める。
「なに?」
「一つ、教えてほしいんですけど」
「何を?土方さんの弱みとか?」
「えっあの土方さんの弱み?!って、ちがいます!」
一瞬興味が惹かれそうになってしまい、慌てて否定する。
もっと他に知りたいことがある。気になって仕方ないことがある。
「どうして……あなたたちにとっては不審者でしかない私を庇ったり、助けたり、心配したり…してくれるんですか?」
親からも大切に思われなかった私なんかを、どうして―――。
答えを待っていると、辺りが急に仄かに明るくなってゆく。誘われるように空を仰ぐ。まだ空にまばらに残る雲の隙間から、さっきまでは見えなかった月が姿を現していた。
