「でも、気にする必要はなかったみたいだ」
ふわり、見つめたままの表情が和らぐ。
「思ってたより、全然元気で何よりだ。よかったよ」
昨夜といい、今といい、どうしてこの人は……。
彼の横顔を直視していられず、目線を下げる。
不思議だった。私が存在することは有り得ない場所で、恐怖や絶望しか感じなかった場所で、決して会うはずのなかった人たちから人の温かさを教えられている、この状況が不思議でしかない。同時にうれしくてうれしくて堪らなくなる。
自分へと向けられる温かい言葉に心が動かされ、傷ついてじゃなく、うれしさで泣きそうになるという感覚を初めて知ったのも、
誰かへ感謝を伝えたいと、久しぶりにそう思わせてくれたのも、彼らだった。
「あの……沖田、さん」
「ん?」
不思議そうに彼は私を見る。私も目線を上げれば、交わる二人の視線。彼の瞳をしかと見つめ、小刻みに震える唇を動かし想いを伝える。
「昨夜は……ありがとう、ございました」
深く頭を下げた。
「助けてもらったのに、お礼も言わないで……酷いことたくさん言って、私ッ、」
「いい」
たった一言。たった一言が、謝ろうとした私を止める。
素っ気なく聞こえたけど、決して怒っているわけじゃない。証拠にその声色はとても穏やかだったから。
