連れてこられたのは縁側。
生憎、ちょうど月の下を大きな雲が通過していて、月光は遮られ地上には微かにしか届かず、月もぼんやりとした輪郭しかわからない。
夜風が吹く。私の髪を揺らし、毛先を遊ばせた。夏だったら夕涼みや夜涼みにはもってこいの場所だろうけれど―――
「さ、寒ッ!!」
今は冬。体がぶるりと震う。
「当たり前じゃないか、冬なんだから」
当然とも言うべきことを口にして、彼は縁側に腰を下ろす。
確かにそうだけど、私にはこっちの冬の方が寒く感じる。冬ってこんなに寒かったっけ?
時代が違えば自然環境もまた異なるのかな。
こんな寒かったら、眠くなるどころかますます目が覚めるんじゃ?
「ほら、座ったら?」
促されるまま、両手で二の腕をさすりつつ彼と少し距離を置いて座る。斬られることを警戒して、じゃなく、単純にすぐ隣に座るのは恥ずかしいから。
相変わらず夜風はやさしくない。薄い布越しに素肌へと冷気を伝える。なのに、何故か心地いいと感じられる。そんな時間が積もってゆく。暫くの間、何も話したりせず隣接する綺麗とはいえない小さな庭をぼんやり眺めていると顔は正面を向いたまま彼が言った。
「元気そうだね」
「え?」
庭を映していた瞳を横へと向ける。まだどこか幼さの残る横顔。本来ならば確実に一生出会うことのなかった青年のその横顔を、とても綺麗だと思った。
「元気というか、まぁふつうそうでよかった」
「? どうして、ですか?」
「……一人で、泣いてるんじゃないかって、思ってたから」
「っ」
ゆっくりと紡ぎ出された言葉は私の鼓膜を震わせ、瞬時に胸へと留まる。正確な時間はわからないけど、こんな夜遅くに彼が私の部屋を訪れた、本当の理由に寒さを忘れそうになった。
こんなにもやさしい人、私は知らない。
