そこまで言って、彼女は再び表情を元に戻す。
「もう馬鹿な真似はするなよ」
「っ」
「私たちも怪しいと思えば、片っ端から斬っていってるわけじゃない。昨夜は運良く逃げ遅れたやつらがいたお陰で事の真相が明らかとなったが、あいつらがいなければ、本当に危なかった。だからもう、二度と馬鹿な真似はするな」
淡々とした口調なのに、彼女の瞳は決して冷たくなく、やさしさにも似た深い情の色を宿す。
その瞳に心がじんわりと震えた。元の時代で、父や再婚相手の女にストレスを発散させる目的のためだけに怒鳴られていたのとは訳がちがう。土台となる感情が全くちがうもの。私を心配して、怒ってくれている。それが、例えようもなくうれしくて。何度も頷いた。
「それに、だ」
彼女は微かに目を柔らかく細める。
「生きていれば、お前が、その……へいせい、とかいう時代へ帰れる手段もわかるやもしれんしな」
「し、信じてくれるんですか?!」
「勘違いするなっ。鵜呑みにしたわけではない!……ただ、納得できた部分があるのも確かだから、こう言ってやったまでだ」
逸る気持ちを抑えられず早口で言うとつん、と顔を逸らされた。それは照れ隠しに見えなくも、ない。信じたわけじゃなくても、それでも、事実を知る人がいてくれるということはこんなにも心強い。私にとって、初めて出来た味方。
口許にじわじわ笑みが浮かぶのを抑えられない。
「ありがとうございます、東雲さん」
「フン……それより、お前歳はいくつだ」
突然変えられた話題。
「?17、ですけど?」
「私の二つ下か。なら、東雲でいい」
「え、いやっそんな、呼び捨てだなんて……!」
「いいと言ってるんだ。歳も近いのだし」
「でも……」
呼び捨てでいいって言われても、仮にも後世まで名を残すあの新撰組の隊士を馴れ馴れしく呼び捨てにだなんて。
そんな恐れ多い…!!
