「そんなこと言う奴がバカなんじゃねーの?」
下を向いていたあたしの耳に聞こえてきたのは、津谷くんの声だった。
今まで一回も話したことのない津谷くんが、あたしを庇ってくれたんだ。
「何だよ津谷ー」
「そーだよ、伊月。何マジになってんだよ。」
当時から人気者だった津谷くんに笑って答える男子たち。
「いや。でも中原の名前って中原にピッタリだよなー、って俺思うよ。」
津谷くんには何気ない一言だったのかもしれない。
だけどあたしにとったらそれはとても感動的で、しかもスゴく優しくて。
その日。
あたしは一瞬にして津谷くんに恋に落ちた。