「もう、やめて…」
あたしに期待を持たせないで。
これ以上、夢中にさせないで。
これ以上、あたしの中に入ってこないで…。
「…詩乃ちゃん?」
「もう、やめて…?」
本当はあたしに気がないくせに、あたしだけその気にさせておいて…
女の子を全員切ったなんてうそ、つかせちゃった。
「嘘をつかせてごめんね。」
まんまと、ハマッてしまったんだ。
絶対ない、そう思ってたのに気づけばあたしの中にいっぱい溜まっていたみたい。
「あたしさっき見たよ。体育館の裏。」
あたしの言葉に春人が一瞬反応したのが、掴まれた腕越しにわかった。
やっぱりあれは春人だったんだね?
「詩乃ちゃん、あれは…」
「いいの。別に。春人はもともとそうだったもの。今になってどうとか…」
思わない。
思わないよ。
だって前まではそれが普通。
それが春人にとっても日常茶飯事。
「あたしに気なんか使わないで。だから良いよ。」
だから、
「あたしのこと好きだなんて…もう、言う必要ないよ。」
「違う。詩乃ちゃん…俺は…」
「あたし!委員会があるんだった!行かなきゃ!」
「詩乃ちゃん、聞いて。」
「春人も早くクラスに戻って。」
「詩乃ちゃん。」
「教室は頼むね?あたしは委員会に…」
「詩乃!」
掴まれた腕を振り払うことを春人は許さない。
あたしの力じゃとうていかなわないその力…ずるいよ。
泣きたくないのに涙は溢れ、春人から離れたいのに離してはくれない。
力強く呼ばれた名前に、一瞬反応してしまった自分が一番…嫌だった。

