それは一年前の出来事。








「やばいー!!」



晴れてこの高校に入学したあたし、中谷詩乃はただいまとってもとってもピンチです。



入学式早々、迷子ってやつ?


その原因はこの馬鹿でかい校舎のせいか、あたしの方向音痴のせいか(もちろん後者ですけど。)



とにかく、あと5分で遅刻になっちゃう!



登校初日から遅刻とか、本気で笑えない。




「も~…どうしよう…」



困り果てたあたしは歩くことをやめて廊下に座り込んでしまった。



そんな時、



「どうかしたの?」



後ろから優しく声をかけられた。


声に反応したあたしが振り向けばそこには…



「新入生?」



今まで見たことのない、超スーパーウルトラかっこいい先輩が立っていたのでした。




「あ、はい。えっと教室がどこかわからなくて…。」



若干頬を赤らめながら、あたしは座り込んだままその先輩を見上げる。



ついこの間まで中学生だったあたしは、明るく染めた髪をツンツンに立てた同級生の頭に見慣れていたせいか、先輩のナチュラルな黒髪がとても新鮮で…



とても惹かれるものがあった。



「んー。何組?」



「C組です。」



一度腕時計を気にした先輩は一瞬眉をしかめて



「遅刻だね。」



あたしにも時計を見せてくれる。



言うとおり、すでに2分の遅刻。




やっぱり無理か。


なんて諦めていたら、



「でも大丈夫。ついておいで。」



座り込んでいたあたしの腕をグイっと掴むと、一気に宙に浮いたあたし。


そしてすぐに両足で着地。



へ…?


一瞬、何が起こったかわからなくて呆然としていたあたしだけど、



「ほら、行くよ。」


先輩の声に促されるようにして足を進めた。