樹と出会った、あの日の
出来事も遠い過去の話に
なりつつある今

いつものように

平凡な日常は続く

バイトが終わってから
久しぶりに瑠璃子と
待ち合わせの為に駅前に
立っている杏の元へ
男性が近づく。

「あの、時間あるかな?」

杏は、無愛想に答える。
 
「ありません」

「即答だね
 友達、待ってるの」

杏は、足元を見たまま一度も
顔を上げず、男性の方を見ない

「待ってません」

「じゃ、何してるの?」

しつこく話しかけてくる男性
いい加減にしてほしい杏は
少し強めに突き放す言い方
をした。