蜜林檎 *Ⅰ*

「いいよ」

「ユリちゃんは、お父さんを
 ユリちゃんのお母さんから
 奪った私のお母さんの事が
 憎い?」

百合は、大きく深呼吸をついた
後に話し出す。

「憎いっていう思いとは違う
 けど、お父さんがアンの
 お母さんと再婚をするって
 聞いた時
 
 もう、わたしの居場所は
 この家には無いって思ったわ
 そして、わたしを置き去りに
 して、あの家を去った実の母
 のところにも・・・無い
 
 言いたい事、聞きたい事
 たくさんあったけど、病弱
 だったアンのお母さんに
 問う事はできなかった
 お父さんにも・・・わたしを
 捨てたお母さんにも」

淡々と話す百合の姿を見つめる
杏の胸は酷く苦しい。

「ごめん・・・なさい」

「アンが謝る事じゃない
 
 アンだって
 わたしと同じように
 苦しんでいるもの」

杏の心の叫びが、言葉になる。