ただ、隣で眠る彼を見つめて
いるだけでいい。

今にも、その想いを言葉にして
樹に告げてしまいそうになった
杏は、大きく息を吸い込む。

「イツキ、送ってくれる?」

そんな杏の肩を強く抱く
樹から優しい声が聞こえた。
 
「今日は、この近くに
 泊まるところを探そう
 この場所なら、朝一番に
 杏を家へ送った後
 
 すぐに戻れば、約束の時間
 には間に合うから」

「いいの・・・イツキ?」

「いいよ」
 
「じゃあ、明日の朝は
 絶対に遅れないように
 私がちゃんとイツキを
 起こしてあげるね」

そう言って見上げた杏は
とても可愛らしくて

樹の言葉、ひとつで
こんなにも喜んでくれる。

樹は、そんな可愛い彼女の唇
に優しいキスをした。