蜜林檎 *Ⅰ*

「俺はユリの苦しみに気づいて
 やることができなかった
 忙しさにかまけて、ユリの話
 を、ちゃんと聞いて
 やれなかったんだ
   
 そんな俺の傍から、ユリは
 離れて行った
 親父さんにも二度と店に
 顔を出すな・・・
 そう言われたよ
   
 ユリは俺の事を思って
 俺との別れを選んだ
   
 最後にユリを見たとき
 彼女はうつむいて泣いていた
 
 今も、あの横顔を忘れられず
 に・・・夢にみる」
 
杏の瞳から、涙が零れた。
  
『自分の知らないところで百合
 が、そんな悲しい想いをして
 苦しんでいたなんて・・・』 
 
その頃、幼かった杏は
何も知らずにいた。

「ユリちゃんは、心から
 イツキを愛していたんだね」

「俺の居場所がユリで
 ユリの居場所が俺だったんだ
 あれから、一度も
 親父さんには会っていない」