「親父さんから聞いてない?
 親父さんも昔、音楽で飯を
 食う事を夢見ていたらしい
 自主制作でアルバムも一つ
 出してるって聞いたよ」

「うそ、わたし・・・
 そんな話聞いた事ない」

雅也は、樹達の良き理解者で
大変お世話になった人のひとり

「お父さん、私がモーメントの
 話をしても全然知らないふり
 をしてたのはどうしてだろう
 ・・・?  
 ユリちゃんも、全く関心ない
 感じだったし・・・」
 
樹の表情が曇るのを杏は感じた
  
「それは・・俺のせいなんだ」

「イツキのせい?」

「あの頃の俺は荒んだ性格で
 メンバーとも、いつも喧嘩
 してたよ、つまらないこと
 で言い合ってね
   
 対番をはったバンドと
 もめたり
 この顔のせいかよく喧嘩も
 売られたしね
 
 俺には、いつもトラブルが
 付きまとっていた」