愛しい人に逢う為に、杏は
駅へ降り立つ。
 
もうすぐ彼に逢える。

ステージに立つ彼を

見つめているだけで

幸せだった。

手が届かない人・・・

今は違う・・・

彼に触れ、彼を近くで
感じる事ができる。
 
杏は、幸せの中にいた。

この幸せが、ずっと続く事を
願い、二人の未来に夢をみる

杏は今、樹の部屋の前に立ち
ドキドキしながら合鍵を
使ってドアを開ける。

「イツキ・・・
 お邪魔します」

脱いだ靴を揃えて、杏は
リビングへと入っていくが
樹の姿はどこにも無い。

『合鍵を使って入ってほしい』

そう、樹に言われたとおりに
した杏。