クラクションを鳴らして

車は走り去る。
 
大切な人を乗せて・・・

差し出された樹の手は

百合には届かない。

携帯の着信音で目を覚ます樹。

彼は、長い・・・

長い・・・夢を見ていた。

「はい」

「イツキ、今大丈夫・・・?」

愛しい人の声が、耳に優しく
聞こえる。

「杏、逢いに行くよ」

もう、二度と大切な人を
失いたくない。

そう、思う反面・・・

彼は悩む。

『許してもらえないと分かって
 いるのに

 このまま
 杏を繋ぎとめていいのか・・
 
 悲しい思いをさせるだけ』