蜜林檎 *Ⅰ*

「イッキの
 
 全てが欲しい・・・」
 
今にも壊れてしまいそうな程に
儚く美しい百合を、必死で
樹は抱きしめた。

「ユリ、お前になら

 俺の全部をあげる」
 
少し痩せた面持ちで、百合は
微笑んだ。

樹は、本当の彼女が何に悩み
 
何に心を蝕まれていたのか

全く気づいてやる事が
できなかった。

キッチンの床に座り込む百合。
 
テーブルの上には、夕食の
材料が入ったままの
買い物袋が片付けられる事
なく放置されていた。  

百合は右手に、ハサミを持ち
床に散らばる何通もの、同じ
筆跡の手紙を封を切らずに
小さく切り刻む。

切っても切っても
手紙は無くなる事はなく
ゴミ箱に、紙くずが
溜まっていく。