振り向いた杏を、樹が手招く。
 
「どうしたの・・・イツキ」

「やっぱり
 駅まで送って行くよ
 ・・・乗って」 

駅の前に停車する高級車を
駅を利用する人の、誰もが
見つめる。

「イツキ、ありがとう
 
 気をつけて
 行ってらっしゃい」

ドアに手をかけようとした杏に
樹は言う。

「杏、手を出して」 
 
樹は右側のポケットの中に
手を忍ばせた。
 
差し出された杏の掌に、樹は
合鍵をそっと置き

照れながら呟いた。

「プレゼント・・・」