「時に子供は、非常なまでに
 残酷になる・・・
 あの時の、あの人の悲しい顔
 を、俺は忘れる事ができない
 
 俺は、母を傷つけた」

杏は、樹を抱きしめ

樹は、杏の胸に顔を埋めた。
 
彼の髪に触れ、頭を何度も
優しく撫でた。

ずっとずっと、年上の彼を

杏は守ってあげたい。
 
樹の悲鳴の全てを

しっかりと胸に受け止めて

彼を、細い腕に包む。

「幼かった貴方は、ただ
 寂しかっただけ・・・
 
 きっと、その想いは
 お母さんに届いてる」

樹は顔を上げ

杏の唇に自分の唇を
 
ゆっくりと重ねる。