杏は、ソファーを離れ

キッチンに立つ

樹の傍へ向かい
 
彼の背に頬を寄せる。

「イツキ・・・
 ごめんなさい
  
 こんな深夜に
 呼び出したりして
 
 もう二度としないから・・・」

ポットのお湯をカップに
注いでいた樹は、その手
を止め、振り返り

杏を抱きしめる。
 
華奢な杏を

壊してしまう程に強く。

「お前だけじゃない・・・
 
 俺が、杏
  
 オマエに逢いたかったんだ」

彼の胸の鼓動が

杏に聞こえた。