蜜林檎 *Ⅰ*

二人は顔を見合わせて笑い合う

杏はチケットを受け取り大切に
手帳に挟んで落とさないように
鞄の奥にしまった。

「でも本当に、そのチケットで
 ライブ観なくてよかったの
 アン?
   
 せっかくイツキがプレゼント
 してくれたのに・・・
   
 私に、遠慮しなくても
 よかったんだよ
   
 それにもしかしたら
 イツキに、もう一度
 逢えたかもしれないよ」

樹の口調をまねて、低い声で
瑠璃子は言う。
  
「『あの場所の子を
  バックステージに
  招待してくれ』
 
 とか、何とかで」

「うんうん、それから・・・」

「『今日は
  君を離さないよ』」

女の子(人)は、例え話で
永遠に会話を続ける事ができ
尽きる事はありません。
 
でも、ちゃんと分かっているの
です。
 
夢は、夢でしかないという事を

・・・・・・