蜜林檎 *Ⅰ*

ライブの興奮も冷めやらぬまま
最寄の駅に着いた二人は改札口
を出て行く。
 

瑠璃子は、停めてある自転車の
鍵を外して押しながら
杏と肩を並べて歩いた。

暗い夜道を歩きながら、偶然に
樹と出会った話で

二人は、盛り上がる。

「あっ、そうそう」

杏は鞄からチケットを取り出し
瑠璃子に渡そうとするが
 
彼女は、チケットに触れる事を
戸惑う。

「触れてもいいの?」

「いいよ」

瑠璃子は、チケットを手に
大興奮で、つい声も大きくなる

「すごい、すごいね
 いいな~アン
 生イツキに逢えたなんて」

「ルリのおかげでございます」

微笑みかける杏に、瑠璃子は
胸を張ってみせた。

「そうでしょう

 そうでしょう」