眠りについた樹の寝顔を

見つめる杏。

閉じた瞼、洩れる息づかい

・・・彼の唇が

ついさっき、こう呟いた。

「・・・君を離さない」

その言葉を、心から嬉しいと
想う杏だった。

だけど・・・

ベッドルームのドアを
音を立てずに、ゆっくりと
閉めた後

リビングルームの窓から
差し込む朝日に導かれて
窓の外を見つめた。
 
燦々と降り注ぐ光を受けて
動き出す町並み。
 
そんな風景を見つめながら
杏は瑠璃子に電話をした。

「もしもしルリ、ごめんね
 こんなに朝早くから・・・」

瑠璃子は、起きる時間だった為
に構わないと寝ぼけた声で話す
 
そして、何があったのかと
杏に問いかけた。

「アンが
 家に連絡しないなんて・・」

『話してもいいよ』

「わたし・・・今
 イツキと一緒にいるの」