「素敵な時間を
 ありがとうございました
 それじゃ・・・」

その瞬間、車が動き出す。  
 
「えっ、イツキさん
 ・・・どうして?」

「俺が
 君と一緒にいたいから
 ・・・困るかな」

照れた表情で、そう告げる樹に
杏は返す言葉が見当たらない。

車内を包む静寂の中

車のスピードが加速するのと
同じように、杏の心拍数は
どんどん上がり

胸が、苦しくて苦しくて
堪らなくなる。

この胸の痛みは・・・

戸惑う杏。

樹は、前だけを見つめ
運転しながら告げる。

「俺は、君が好きだ」

そして、杏を見つめて
問いかけた。

「君は、俺が好き?」