「イツキなら

 もう大丈夫だよ」

その言葉に雅也は、安堵の表情
を浮かべた。

「そうか、大丈夫なのか」

「ライブツアー中に
 風邪を拗らせて、肺炎に
 なってしまって
 つい最近まで入院してたの
 だけど無事に退院して
 
 今日は、復活ライブ
 ・・・今から楽しみ」

壁にかかった時計を見た杏は
急いで部屋へと戻って行く。
  
一人でお茶を飲む雅也の元へ
真がナナを抱いて訪れた。

「親父さんが、アンちゃんの
 好きな奴の事を気にする
 なんて・・・
 どうかしたんですか?」

真から離れて、雅也の傍に駆け
寄るナナを両手で抱き上げる。

「いやいや、芸能人に
 恋焦がれる娘を
 持つとは困ったもんだよ
   
 もう、アンも確か22歳だろう
 恋人の一人も
 できないものかね・・・
  
 シン、そろそろ開店準備に
 入るとするか」

親の嘆きは何のその、杏は
ライブへ出掛ける用意を
進めていた。