side:和哉




朝、琥珀は走って逃げた。



もちろん、キスするつもりはなかった。



無理やりは俺のポリシーに反する。



なにより……



佐原を傷つけたくはなかった。



自分の我が儘で好きな女を泣かすのはサイテーだ。



だから……



佐原が俺を、好きになってくれるまではー…



「先輩!!」



佐原の声に俺は振り向いた。



「佐、原……?」



ハァハァと、息を乱し、俺に何かを伝えようとしている佐原。



なんだ……?



「せん…ぱぃ…朝は…すいませんでした…。」



あぁ、その事か。



「ばぁか、キスは冗談だって、気にすんな。」



「ぇ…?」



「けど…あの告白は…冗談なんかじゃない。」



そう、冗談なんかじゃない。



お前への気持ちは……



「お前は冗談だと思うかもしれないけど……これだけは…言わせてもらう。」



「先輩…?」



「お前が……好きだ。」



本気だ……



さっきと同じ言葉で……



君に、



今、



伝えよう…………