ーザァァァァ……



雨音だけが聞こえる。



暗闇の中にいるのは、私と先輩だけ……



ートクン、トクン



先輩の心音が伝わるほど、私たちの距離は近くて……



「せ、先輩…?」

「何?」

「も…大丈夫ですので、離して下さい……。」



と、先輩から離れようとしたが……



グッと両腕で力をこめられて、先輩から離れられない。



「先輩…?離して……」


「…………」



無言で黙る先輩。



どうしたんだろう……



「先輩…?」



戸惑っていると……



「ごめん…なんでもないから……」



そう言うと先輩はスッと私から離れた。



大分、暗闇に慣れた目に映った先輩の顔は少し切なそうに見えた。



先輩ー……?