「なぁ、なんで別れたの?」


あたしが椅子に座った瞬間、緒方は言った。

あたしはびっくりしながらも、
真剣な緒方の顔を見て喋り始めた。


「翔太……彼氏の気持ちがね、あたしから離れていっちゃったの。
それにあたしの気持ちも彼氏から離れていっちゃった」

「お前泣いてんじゃん」


あたしは無意識のうちに涙を流していた。

あたしの翔太への気持ちはもう冷めていたはずなのに。

なんだか悲しかった。

あたしが必死に涙を拭っていると、緒方はあたしを抱きしめた。


「泣くなよ。俺が幸せにするから」

「え?」

「好きだったんだ、ずっと。
だから、俺がお前を守るよ」


緒方の腕の中はすごく安心した。

この人となら幸せになれるかもしれない。

あたしはそう思った。


「本当にあたしのこと守ってくれる?」

「当たり前だろ!」

「じゃあ、あたしを彼女にして下さい」


あたしは緒方を見上げて微笑んだ。

あたしたちは見つめ合って、そのままキスをした。

緒方から伝わる愛。

本当に幸せだ、なんて。


「秋人って呼んで?」

「…秋人?」

「うん。俺も奈穂って呼ぶから」


あたしの耳元で、

“大切な人とは名前で呼び合いたいから”

って囁く秋人が、本当に好きだと思った。


《END》