あたしはあの日、全てを失った。



家族も、生きる意味も、全て、全て。



頬からこぼれ落ちる涙は重力に逆らわずゆっくり紙の上に落ちてシミを作った。
あたしの心にできた穴のように。



最後に残されたお父さんからの手紙。


お父さんらしい少し丸くてどこか暖かみのある文字を何度も何度も指でなぞった。


そうしたらお父さんの気持ちが分かるような気がして。




~お父さんは空の上でお前をいつまでも見守ってるよ。大好きだよ…みく~


びり…

涙で滲んだそれが少し破れてあたしはそれが合図だったかのように、声を出して泣き出した。


嫌、それは違う。

あたしからは声など出ていなかった。

どうやらあたしは声すら失ってしまったらしい。