防衛要塞都市

「……まだ生きてる。」


リーが、唐突に口を開いた。


独り言のように小さく、そして感情の無い、冷酷な声だ。


スクリーンに大きく映っていた、戦闘機が舞う空の景色が小さくなり、不時着した敵機の映像が大きく映し出された。


黒煙が立ち上る機体から這い出してきたのは、一人の人間だった。


パイロットのスーツにヘルメットを被っていて、性別さえも分からない。


だが、立ち上がらないところを見ると、どこかに重傷を負っているようだった。


氷が素早く解けるかのように、赤い液体が地面に広がっていくのも確認できる。


そして、その人間は、静かに左腕を空に向かって掲げた。


助けを求めているように、見えなくはない。


「少尉、とどめを。」


カシワギさえも、冷たく、無表情でそう言い放った。


「え?」


やっとセイルが驚きの声を上げた時、ミサイルは既に不時着機とその周りのモノを、木っ端微塵に粉砕していた。