「火遊びの相手ならお断りよ」

馴染みのバーのカウンター席。

そこに座っているのは、見飽きた男。

私はその背後から。

履き慣れた十二センチのピンヒールで立ったまま、厭味を込めて。

開口一番、そう言い放った。


だけどこの男にそんな厭味が通じないことは、すでにわかっている。

ランドセルを背負っていた頃から続く腐れ縁は、だてじゃない。

それでも。こんな無意味な厭味を口に出さなければ、私の気が収まらない。


「アキホ。お前、頭悪くなったのか? 手を出す気なら、こんな場所に呼び出さないで、部屋に呼ぶに決まってるだろ?」