和風の屋敷には似つかないピアノの音色。

その女性は荒々しいピアノの音色に綺麗な顔を歪ませた。

これではショパンも報われない、しっとりと静かな名曲は荒々しく苦しそうだ。

『架音(カイン)、弾くならもっと優しく弾きなさい。』

ギロリと睨む少年は、彼女の言葉も気にも止めず、弾いてゆく。

痛々しい程の名曲[別れの曲]。

彼女は、はぁ、っと深い溜め息を吐いた。

少年は、とても綺麗な顔立ちをしている。
悩ましそうに彼を見つめる彼女…母親に似たのだろうか。

小柄で華奢、肌が雪のように白い。ここまで聞くと彼の容姿は中性的で幼く感じられるが、目が切れ長できりりとした眉が男らしさをアップさせている。

そして何より大人っぽさがある。

彼は事実17歳の高3だ。
子供と大人の間をいったりきたりしているのだ。