高鳴る鼓動に比例するかのように、自室へと向かう足が速い。

別れ際に咲都の見せた笑顔が、俺をそうさせているんだ。


この学園の敷地の広さに途方に暮れている時、突如俺の前に舞い降りた天使。


それが、咲都だった。


夏の日差しに溶けてしまいそうな白い肌。

大きくて丸い、漆黒の瞳。

そして瞳同様に黒く、美しい髪。


天使だなんて大袈裟だと笑われるかもしれないけれど、咲都はそれぐらい、本当に綺麗だった。