彰那に高跳びを辞めると聞かされた時、僕が感情的になってしまったことがあった。
確かに、彰那が跳ぶ姿は好きだった。
だけどそれ以上に僕は、今の彰那が好き。
自由に今を過ごしている、彰那が好き。
けれどやっぱり、ウザい時はウザい。
迷惑な時は迷惑。
正に今がそれ。
素麺が食べたいなら自分で買って来て、煮るなり焼くなりすればいいじゃん。
そこでまず僕に頼むのは間違っている。
この暑い中、人に買い物に行かせて、作らせて。
自分は涼しい部屋の中でボーッと何もせずに、素麺が目の前に出されるのを待とうだなんて……まったく。
思わず溜め息が零れそうになった時。
僕の前に、突然大きな影が現れた。