「おっ、咲都じゃねぇか。珍しいな、お友達と一緒か?」
聞き慣れた声。
振り向けば彰那と、その後ろに彰那のクラスメイトで学年首席の神宮(カミヤ)くんがいた。
いつもはただ憎たらしくて手が掛かるだけの彰那だけど、今だけはその存在のありがたさに、後光が射して見える。
……助けて、彰那!
「おいおい、咲都ったら何そんなに口パクパクさせてんだよ。そうか、俺にお友達を紹介したいのか。よしよし、中に入ろうぜ?」
彰那はそう言うと、ブレザーのポケットから鍵を取り出した。
この、馬鹿ッ!
一体何年も僕の何を見てきたんだよ、馬鹿彰那ッ!
今、口パクで「助けて」って言ってたの!
鍵を回す彰那の背後から、僕は彰那に軽い蹴りを一発お見舞いしてやった。
「……痛ッ、何すんだよ。友達、部屋に入れんのそんなに恥ずかしいのか?」
「彰那の馬鹿」
「はいはい。俺は馬鹿ですよーっと」
……ムカつく。
今日の晩ご飯は彰那の嫌いなモノに決定だね。


