「咲都」


下の名前で僕を呼ぶのは、幼馴染みの彰那か家族ぐらいで。

それと、夏休みに出会った彼も、だ。

どうして初対面の兵藤くんが、僕を「咲都」って──


「今日から宜しく。また会えて嬉しいよ、咲都!」

「……えっ!?ちょっと、ここ日本だよ!」

「あー、ごめん。嫌だった?ちょっと、嬉しくって!」


照れ臭そうに笑って、兵藤くんは席に着いた。


抱き着かれた。兵藤くんに。


何、この人!?

僕、鳥肌立ってるし……。


それに「また会えて嬉しい」って?

前に兵藤くんと会った覚え無いんだけど。


新学期早々、本当にめんどくさいことになった。

まさか、こんな厄介な転校生とクラスメイトになってしまっただなんて──