でも、柚と花たちの笑顔を見ていたらそうでもないような気がした。
大丈夫。
大丈夫だよ。
そう半ば強引に自分に言い聞かせて。
「ねーっ、れーい!今日放課後アイス食べない?!」
「えっ……!?でも、校則では……」
禁止されてるよ?と言いかけたところでまたあの冷たい空気。
本当に怖い。
「校則なんてイイよねっ、いこ!」
「いえーい♪麗乗りイイ!……あんたとは大違いだね~」
花がにやにやと気味の悪い笑みを浮かべながらある子を見た。
ちょっと悪いけどすごく地味な子。
でも、恰好的にはあたしが前いた学校の髪型みたいな。
三つ編みでひっ詰めてて。
しかもメガネ。
ぱっと見うわ~って感じの子。
「でっ、でもっ、あの時はっ、塾があって……っ」
そして花がその子の机をバンっと蹴った。
「いいわけすんじゃねーよ!行かなかったことには変わりねーの!」
「はっはいっ……」
その子は今にも泣きそうだ。
「柚っ、止めなくていいの!?」
「あはは、麗ったらそんなの気にしてるの?いい子ちゃんだねっ!そうそう、あんなふうにならないようにするには〝花より目立たないこと〟が大事だから、よく憶えといたほうがいいよ。麗はその髪をちょっと地味な色に染め直したほうがいいかもね。」
「……!?」
「あぁ、あいつがなんで花より目立ったのかって?テストで3点差で花を抜かして学年1位になったの。ふふっ、3点であんなふうになるのか、こっちサイドにいるのかが決まるのよ。毎回みんな分かる問題を飛ばしたり、わざと間違えたり。いろいろやってるみたいね。麗も気をつけて。」
あたしは声が出なかった。
頭が真っ白になった。
すぅーと身体が冷えるのを感じた。


