ひりひりと痛む頬を抑えて、それでもあたしは、
「先生、それでは失礼します。お世話になりました。」
と落ち着き払っていい切り、ぺこりと一礼した。
「は……はぁ……」
先生はわけがわからないという表情をしている。
でも、あたし、もう決めたんだ。
自分で自分のことを決めて、
お父さんみたいに自分優先じゃなくて、
ひとのことを考えて自分を2番目にできるような人になりたい、って。
あたしはもう一度礼をしてから教室を出た。
廊下は窓があいていて、夏の風の少し蒸し暑い、さわやかな香りがした。
あたしは自分の教室に戻り、唖然としているクラスメートをよそに、
自分の荷物をまとめた。
全部まとめて、一気に持った。
すごく重かったけど、誰の手も借りずに持って帰れたらきっとあたしは成長できる。
と思った。
本能、というか、直感だろうか。


